2015(H27)年度 山口県小学校教育研究会算数部研究課題

算数の楽しさを実感する子どもを育む
 ―数学的に考える力を確かに育む授業の工夫

「算数が大好き」,「算数が楽しい」これは,算数教育に携わる教師なら誰もが願い,目指している子どもの思いであろう。しかし,近年行われたIEA数学教育・理科教育動向調査(TIMSS2011)では,「算数の勉強は好きか」の問いに対して「強くそう思う」と答えた子どもは29.2%で,調査国中2番目の低さであった。また,OECD学習到達度調査(PISA)の意識調査の結果からも,算数に関する興味・関心について,同様な課題が指摘されている。
そこで,本研究では,研究主題を「算数の楽しさを実感する子どもを育む」として研究を進める。本研究でとらえる「算数の楽しさ」とは,単純に娯楽的な楽しみではなく,算数的活動を通して,数学的に考え,新たな価値を見出していく楽しさである。そこで,副主題を「数学的に考える力を確かに育む授業の工夫」とした。数学的に考える力を確かに育んでいくことで,算数を学ぶ意欲につなげていけると考える。
子どもが,数学的に考えていくためには,帰納的・類推的・演繹的に考えたり,互いの見方や考え方を分類整理・関連付けたり,算数のもつ言語としての役割を生かして説明したりする力を育むことが大切である。単元の中には,数学的に考える力を重視する場面と知識や技能を重視する場面があるが,ここでは,前者に着目していく。本研究では,数学的に考える力を確かに育んでいくために,子どもの思考の流れを生かして単元を構成しながら,学習過程において,以下の3項目を適宜行っていきたい。


(1)子どもが「わかりたい」,「解決したい」と思える導入場面の工夫

 子どもが,課題に魅力を感じ,課題解決へ意欲的に取り組んでいけるように,授業の導入では,以下のような工夫を施していきたい。

@ 課題解決の必要感をもつことができるようにする
A これまでの学びとのつながりを意識できるようにする
B 多様な考えを引き出すことができるようにする

子どもが必要感をもちながら,主体的に学習に取り組んでいけるような課題を設定する。例えば,生活の中での課題やゲーム性のある課題,これまでとの意識のズレから解決したいと思える課題などが考えられる。子どもの思いから本時のめあてが生まれることで,学ぶ意欲はさらに広がっていくと思われる。
また,算数の系統性を生かし,これまでの学びとのつながりを意識させる。これまでの学びとの共通点や相違点を基に既習事項との関連を考え,生かさせることで,見通しをもちながら自信をもって課題に取り組むことができるようにしたい。
さらに,子どもの多様なアプローチが考えられる,解決方法が複数存在する課題を与えることで,子どもは,友達の考えも知りたいという思いをもち始めるであろう。


(2)互いの解決方法の中から,算数的に価値の高いものを見出していける展開場面の工夫

 互いが見出した見方や考え方を基に,より算数的に価値の高いものを見出していけるように,展開場面では,以下のような工夫を施していきたい。

@ 互いの解決方法を関連付けることができるようにする
A 互いの解決方法の価値を見出すことができるようにする

互いの解決方法の共通点や相違点を基に,関連性を探る場を設ける。互いの解決方法を,数や式,図などに着目しながら,比較させていくことで,より一般化された見方や考え方を見出すことができるようにするのである。
 互いの解決方法にそれぞれのよさがある場合は,有用性,簡潔性,一般性,正確性,能率性,発展性,美しさなどの数理的な処理のよさの観点から,解決方法を見つめる場を設ける。そうすることで,今後の課題解決における新たな視点を見出すことができるのである。
また,学習形態としては,教師のねらいに応じて,学級全体で行う場面と小集団で行う場面が考えられる。小集団活動を効果的に取り入れることで,友達と解決方法を相談したり,互いの考え方の根拠を説明し合ったりすることができる。その中で,友達と一緒に算数的に価値の高いものを見出す喜びや,わからなかったことがわかる喜び,自分の思いを表現する喜びなどを実感させていくことができるであろう。
 

(3)今後の学びに生かしていける終末場面の工夫

 見出した学びを,一人一人が振り返り,今後の学びに生かしていけるように,終末場面では,以下のような工夫を施していきたい。

@ 本時の学びを自分なりに表現し,見つめ直すことができるようにする
A 本時の学びを活用し,その有用性を実感できるようにする

本時のめあてを振り返り,仲間との学びで見出した見方や考え方を,自分なりの表現でまとめる場を設けることが考えられる。そうすることで,本時の学びを見つめ直し,次時の学習につなげていくことができるようになるであろう。
 また,本時に見出したことを生かして,適用問題や発展的な課題を解決する場を設けることも考えられる。そうすることで,学習内容を定着させると共に,本時の学びのよさを実感し,今後の学習や生活に生かしていくことができるようになるであろう。


以上のようにして,子ども一人一人が数学的に考えていけるような授業を工夫していくことで,「算数は楽しい」,「算数で学んだことは役に立つ」という思いが,子どもの中から生まれるであろう。その思いが,算数への興味・関心を向上させ,進んで算数を学習していこうとする態度につなげていくことができるのである。