2013(H25)年度 山口県小学校教育研究会算数部研究課題
「算数的な表現力」を育む
〜子どもが,豊かに思考・表現する授業の工夫

算数科学習指導要領では,表現力の育成が重視され,子どもが具体物や半具体物,日常の言葉,数,式,図,表,グラフなどの多様な手段を用いて,自分の考えを表現する活動を充実させていくことが求められている。

 そこで,本研究では,子どもの「算数的な表現力」を育むことを研究主題に掲げ,研究を進めていくことにする。また,表現力と思考力とは互いに補完しあう関係にあり,思考の過程や結果を表現していくことで,より一層思考が促進される。つまり,子どもの「算数的な表現力」を育んでいためには,それを支える思考力の育成が不可欠であり,「算数的な表現力」を育んでいくことが,子どもの思考力を培っていくことにもつながる。そうしたことから,副主題を「子どもが,豊かに思考・表現する授業の工夫」とした。

 子どもが,豊かに思考・表現していくためには,日々の授業で,思考や表現の手段が多様に生まれてくるような教材と出合わせたり,互いが用いた手段を,クラス全体で共有する場を設けたりすることが大切である。かかわり合いの中で,思考や表現の手段を増やし,進んで用いることができる子どもを育てていきたい。

 では,そうした多様な手段を用いながら,「豊かに思考・表現する」子どもとは,具体的にどのような姿だろうか。本研究では,以下のような子どもの姿だととらえている。

(1) 見通しをもちながら問題を解決している
(2) 解決方法の中から,算数的に価値のあるものを見出している
(3) 本時の学びを振り返り,今後の学びに生かそうとしている

授業の中に,上記のような子どもの姿を求め,以下のような工夫を施していきたい。


(1) 見通しをもちながら問題を解決していけるように 

 問題と出合ったとき,積極的に解決への糸口を探ることができる子どもを育成していきたい。そのために,授業の中では,以下のような工夫が考えられる。

@ これまでの学びとのつながりを意識し,見通しがもてるようにする
A 問題に対し,何度も試行できるようにする
B 一人ひとりが解決への糸口を得ることができるようにする

算数には,内容の系統性や学習の連続性が明確であるという,教科としての特性がある。学びのつながりを意識できるよう,問題の提示の仕方を工夫したり,前時までの学びの様子をノートや掲示物から想起させたりすることで,これまでの学びを根拠に,見通しをもつことができるようにしたい。

また,問題に対し,何度も試行する中で,解決への見通しが生まれてくることがある。子どもがくり返し試行できるよう,時間や場を保障したり,作戦やコツが課題の解決につながる,何度も行いたくなるようなゲームを取り入れたりすることも,有効な手だてである。
 
 さらに,問題解決の糸口が見え始めた段階で,互いの考えを紹介したり,自分が解決に生かしたい他者の考えを選択させたりすることで,どの子どもも解決への糸口を得て,自信をもって解決への一歩を踏み出せるようにしていきたい。


(2)解決方法の中から,算数的に価値のあるものを見出すことができるように
 
 一つの問題に対して,子どもたちの解決方法は多様に生まれてくる。その中から,「問題を解決する上で大切なことは何か」,「より算数的に価値の高いものはどれか」ということを,自分なりに考え,判断できる子どもを育てていきたい。そのために,以下のような工夫をしていきたい。

@ 互いの解決方法の共通点を関連付けることができるようにする
A 互いの解決方法の相違点を比較できるようにする
B 互いの解決方法のよさを自覚できるようにする

 互いの解決方法に,大きく共通点が見られる場合には,その関連を探る場を設けることが考えられる。例えば,解決方法に共通していることをキーワードにして明らかにすることで,問題を解決する上で大切なことを,見出すことができるようにするのである。

 互いの解決方法に,大きく相違点が見られる場合には,それらを比較する場を設けることが考えられる。例えば,対照的な考えを意図的に取り上げることで,「自分の考えと相手の考えはどこが違うのだろう」と子どもが探り,比較する中で,よりよい解決方法を見出すことができるようにするのである。

 また,有用性,簡潔性,一般性,正確性,能率性,発展性などの算数的なよさの視点から,解決方法を見つめる場を設けることで,それぞれの解決方法のよさを自覚し,学びの価値を実感できるようにすることも大切である。


(3) 本時の学びを振り返り,今後の学びに生かしていけるように

 自分の考えた筋道を振り返り,本時に見出したことや本時の学び方を,今後の学びに生かしていこうとする子どもを育んでいきたい。そのために,以下のような工夫をしていくことが考えられる。

@ 本時の学びを要約することができるようにする
A 本時の学びを自己評価することができるようにする
B 本時の学びを新たな課題に活用できるようにする

例えば,本時の学びで見出した知識・技能,見方や考え方を言葉や式,図などを用いて,要約する場を設けることが考えられる。本時の学びで大切なことを意識し,より簡潔で一般性のある表現に要約させることは,今後の学習に生かしていく上で,大いに役に立つであろう。

 また,自分が初めに見通した解決方法と,他者とのかかわりで見出すことができた解決方法を比べさせることで,学びの成果や課題を見付けることができるであろう。自己評価の中で,学びの成果や課題を意識させることは,本時の学びを今後の学びに生かしていく上で有効な手だてである。

 さらに,本時の学びを活用して,新たな課題を解決する場を設けることで,学びの有用性を実感するとともに,学習内容を定着させ,今後の学習にも活用していくことができるようになるであろう。

 以上のようにして,子ども一人ひとりの中に考えが生まれてきたら,それを他者に表現する場を保障していきたい。自分の考えを他者に説明しようとすると,自分の考えを再度振り返り,他者にわかるように,論理立てて表現していこうとするであろう。そして,一人ひとりの表現を教師がみとり,価値付けていくことで,子どもは,表現力をさらに磨き,今後の学習や生活にも生かしていくことができるであろう。

このように,豊かな思考に支えられた表現を互いにかかわらせ合う中で,さらに思考を深め,表現力を伸ばしていく子どもを育んでいきたい。