2009(H21)年度 山口県小学校教育研究会算数部研究課題
「算数的な表現力」を育む
〜子どもが,算数の知識・技能を活用し,   
            豊かに表現する授業の工夫〜
1 前研究の成果と課題

算数部では,この3年間,自分の問いから子ども一人ひとりの考えが生まれてくるような授業の工夫に焦点を当て,まず,教材とそこに存在する数学的思考のあり方を教師サイドで確実にとらえることに重点を置き,そのつながりを明確にして授業を構想,展開していった。また,他者とのかかわり合いを授業の中で効果的に取り入れていった。

この研究の成果として,まず,教師の発問が,子どもにとってとらえやすい形に精選されていったことが挙げられる。その結果,子どもは,各々の考えを積極的に生み出し,授業への参加意欲や問題解決のための意欲を高めていった。これは,子どもの学習保障ともなり得る大きな成果といえる。また,算数の図や式などをもとにかかわり合いを重視した授業は,子どもの見方・考え方を広げていくことに貢献した。自分なりの考えをもつことにより,仲間と積極的にかかわるようになった子どもは,いろいろな見方・考え方を豊かに吸収し始めたのである。

一方,子どもの考えを,授業の中で効果的に生かしていくということについては,研究の余地を残した。先に挙げたように,本研究の成果として,子どもが自分の考えをもち,表現を多様化させていった反面,それを生かしていく準備が不足していた感は否めない。
そこで,本年度は,その表現をどのようにみとり,価値付け,子どもに還元していくのかという教師サイドの構えを研究の課題として考えていきたい。

2 研究主題について

算数科改訂指導要領では,思考力・表現力をはぐくむための方策が練られ,その手段として,記録,要約,説明,論述などといった,表現活動をかなり重視している。これは,表現そのものに,子どもの思考が反映され,算数的に表現するためには,知識・技能を活用しなければならないからである。

そこで,本年度の研究では,この子どもの算数的な表現力の育成を目指し研究主題を

「『算数的な表現力』を育む」

副主題を「子どもが,算数の知識や技能を活用し,豊かに表現する授業の工夫」として,研究を進めることとした。

本研究でとらえる「算数的な表現」とは,算数の言葉,数,式,図,表,グラフなどを用いて,自分の考えを表現したり,他者に説明したりすることである。
もちろん,子どもの表現は多様であり,そこには算数的であるものとそうでないものとが存在する。その中で,教師は,算数的に表現されたものを積極的にみとり,評価し,それを子どもたちに還元していこうということである。この教師の働きかけが,子どもの算数的な表現力を伸ばしていく鍵になると考える。
本研究では,このような教師の働きかけを効率よく行っていくために,授業づくりのポイントとして,次の3項目を設定する。

(1) 授業のわかりやすさと子どもの問いを生み出す工夫
算数科において,授業のわかりやすさは,子どもの考えを多様に引き出していく上で,重要なポイントであると考える。よって,授業においては,子どもが教師の発問をとらえ,自分の中に生まれた問いを自覚しつつも,適度な負荷を感じているような授業の導入を目指したい。子どもがもった負荷は,互いの考えをかかわり合わせるきっかけとなるからである。そこで,教師が授業の導入時に設定する教材や発問には,以下のような工夫を施していきたい。

○ いくつかの解決方法が見えてくるような教材や発問
○ 既習の知識・技能をつなぎ合わせて問題解決していけるような教材や発問
○ 問題解決にあたって,既習の知識・技能で解決できる部分と,新たな知識・技能が必要となる部分が,子どもにとってとらえやすくなっているような教材や発問

このような導入を目指すためには,全ての子どもに意図が伝わるような教師の発問の工夫と,子どもが,教師の発問をどの程度とらえているかという確認も欠かせない。教師は,発問の意図を確実に伝えるために,積極的に支援していく必要がある。

(2) 算数の知識・技能を活用する場面を生み出す工夫
本研究では,子どもが問題解決をする際に,関係のありそうな既習の知識・技能をつなぎ合わせ,問題解決の道筋を見出していくことが,知識・技能を活用する姿だととらえ,その姿を授業の中に求めていく。以下に,知識・技能の活用のある場面の具体的な働きかけを例示する。

○ 子どもが,問題解決に必要な既習の知識・技能を想起できる授業場面の設定
○ 子どもが,自分なりの考えを表現し,それをもとにかかわり合える授業場面の設定
○ 子どもが,知識・技能をどのようにつなぎ合わせたのか自覚できる授業場面の設定
○ 子どもが,新たにもった考えを自覚し,それを表現できる授業場面の設定

教師はこのようにして活用の場を仕組み,考えを表現させることによって活用のよさを子どもに自覚させながら,活用する力をもった子どもを育てていく。

(3) 自分の考えを豊かに表現する場面を生み出す工夫
活用のある場面を授業で用意していくためには,子どもが,算数の言葉,数,式,図,表,グラフなどを用いて,自分の考えを表現したり,他者に説明したりする活動を取り入れていく必要がある。子どもは,自分の表現に対して,他者から評価を得ることで,自分の表現に自信をもったり修正を加えたりしていくのである。以下に,子どもが,自分の考えを豊かに表現する場面の具体的な働きかけを例示する。

○ 子どもが,言葉,数,式,図,表,グラフなどを用いて,自分なりの考えを表現できる算数的活動の設定
○ 子どもが,互いの表現のよさを参考にして,より有用性の高い考えへと練り上げることのできる場の設定
○  単元や教材の特性に応じて,子どもが,日常生活や他教科等の学習,より進んだ算数・数学の学習へ活用できる場の設定

ここでは,子どもが,表現したものについて,自分なりの根拠を付け加えていけるようなワークシート等の工夫も,子どもの表現力を育てていく上では大切であろう。

本論に挙げた授業づくりのポイントは,1授業において全てが同時に機能するものではない。
本研究では,目の前の子どもの実態と単元の特性とを考慮し,それらにあった形で,授業づくりのポイントを生かしながら,子どもが,算数の知識・技能を活用し,豊かに表現することのできる授業の工夫をしていく。そして,その中で,子どもの生活に生きて働く「算数的な表現力」を育むことを目指していく。