2007(H19)年度 山口県小学校教育研究会算数部研究課題
算数で「考える力」を育む
〜子ども一人ひとりが自分の考えをもつ授業の工夫〜
1 研究主題について

算数教育が目指すことは,子どもに論理的な思考力を育むことであり,考えることの楽しさや面白さを感じさせることである。
子どもが「自分がもった問いに対して自分なりに考えていく」「自分が考えた筋道を論理的に表現する」といった「考える力」を育むことが,算数で育むことができる「生きる力」ではないだろうか。

算数部では昨年度から,『算数で「考える力」を育む』を研究主題を掲げ,副主題を「子どもの表現を生かした授業展開の工夫」として,取り組んできた。
例えば,問題解決の場面において,絵や図,表やグラフを扱うメリットは大きい。
表に表された数値だけでその数値間の関係をとらえるよりも,直接視覚に訴えるグラフの方が「AはBの約3倍」などと格段に関係をとらえやすい。
文章題であれば,逆思考の難解な問題であっても,絵や図に表すすべを身につけることで,子どもの立式に対する確かさも増す。
このように,思考の道具として,表現の仕方を身に付けることは大切である。
しかし,それと同時に,授業の中でどのような数学的な考えがうまれ,どのような思考があったといえるのか,教師は,とらえていく必要がある。

そこで,本年度は,「考える力」を育んでいくために,自分の問いから子ども一人ひとりの考えが生まれてくるような授業の工夫に焦点を当てて研究に取り組むこととする。

今年度算数部が研究主題に掲げる「考える力」について,次のような子どもの姿があるとき,発揮されている力ととらえ,この三つの子どもの姿を重視しながら,算数の授業を構想していくことにする。

・ 生活の中の事象を,数理的な要素へ抽象していく子ども
・ 数理的にアプローチすることで,問題を解決していく子ども
・ 身につけた数学的な見方・考え方を活用していく子ども

このように「考える力」を発揮する子どもの姿をとらえると,算数はこれから生きていく上で大きな役割を果たしていくことがわかる。
単純化され,要素を限定した世界で行われ,分かりやすく解決を進めていくことができる算数だからこそ,「考える力」を育みやすい。
そして,子どもは,算数科で育まれた「考える力」をもとに,より複雑で困難な問題に立ち向かっていく。
この姿は「考える力」の生きて働いている姿であると考える。

2 サブテーマについて

今年度は,各ブロックで研究を進めるにあたって,次のサブテーマを掲げる。

子ども一人ひとりが自分の考えをもつ授業の工夫

本年度は,昨年度に取り組んだ表現を身に付けさせる過程に目を向け,子ども一人ひとりが自分の考えをもつ授業の工夫にせまっていくこととする。
「自分の考えをもつ」とは,解決に向かう方略がわかり,自分の判断に根拠がもてることである。
子どもに考え方が身につくのは,教材との出会いを教師がどのように演出するかにかかっている。
「考える力」は,1時間の授業だけで育まれるわけではない。
1時間1時間の授業の積み重ねによって育まれるものである。
そこで,日々の授業を工夫していくために,次の2つの視点を大切にしていく。

視点@
既習の内容と授業で扱う教材との数学的な考え方(内容面)におけるつながりの明確化

「考える力」を育むためには,まず,授業で扱う単元・教材における,着目すべき数学的な考え方(内容面)を精選する。
そして,本単元・本時のよりどころとなる,既習の内容にある数学的な考え方を明確にし,授業を行うことが大切である。
ここでいう数学的な考え方とは,分数の計算を支えている,整数や小数の計算における10や0.1などを単位としてとらえて計算することや,L字の図形の面積を求める際に生きる,図形の構成・分解の見方・考え方,かけ算を用いた数の数え方の工夫(分ける,つけたしてひくなど)などをさす。
既習の数学的な考え方が,問題に適用できることに子どもが気づけば,その有用性や意味を実感できるとともに,問題解決に対する新たな見方・考え方を見出すことができると考える。
そして,日々の授業で,つながっている数学的な考え方を生かしながら解決の方法を身につけ続ける子どもは,新たな問題に出会ったときでも,「数値を簡単にしてみるとどうか」「以前に似た問題はなかったか」など,自ら活路を見出す「考える力」を発揮することができるようになると考える。

視点A
他者とのかかわりの重視

他者とかかわることで,いろいろな解決方法に出会う可能性が生まれる。
どうしてそのような解決方法になったのか,推測したり,説明したりする必要がでてくる。
互いの方法を比較することで,簡潔性や合理性といった数学的なよさに気づいたり,式を変形すると同じ式になり,一見違う方法も,実は同じ意味であることがわかったりする。
そこで,かかわる際には,自他の考えの着眼点や根拠をもとに話したり,示したりしながらかかわることを重視する。
そうすることで,問題解決に際して,既習である数学的な考え方とのつながりが子どもたちの話題にあがり,スパイラル的に学びを深めていくことができるようになると考えるのである。

以上,2つの視点について述べた。
これら2つの視点は相互に絡み合っている。
各ブロックでの実践で,研究対象として明確にしながら取り組んでいただきたい。