2004(H16)年度 山口県小学校教育研究会算数部研究課題
算数を楽しむ子どもを育てる
〜基礎・基本をより確かなものにする学習指導の工夫〜
算数を学ぶことの楽しさや充実感を味わう子どもの姿を求め、研究課題として「算数を楽しむ子どもを育てる」を掲げ、5年間研究を続けてきた。
昨年度は「指導方法の工夫と発展的な学習のあり方」に視点をあて、各ブロックで実践研究を行った。
指導方法に目を向け研究した結果、学習指導をさらに改善していくことの重要性が明らかになった。
学習指導を改善し、よりよい授業をつくることが学力低下や算数嫌いの問題を解決していくことにつながると考えたのである。
では、どのような授業をつくり出せば、基礎・基本をより確かなものにできるのであろうか。

算数部では、
「子どもが学ぶべきことは何か」
「教師はどのような働きかけをすればよいか」
「子どもはいかに学ぶか」
という3つの視点を考慮して授業づくりをすることを提案する。


子どもが学ぶべきこととは何か

基礎・基本は学習指導要領そのものであるという立場をとる。
ここでは「子どもが学ぶべきこと」として、基礎・基本の中身について検討してみたい。
小学校学習指導要領解説算数編「ゆとりの中での基礎・基本の確実な定着」(8p)では、
○ 作業的・体験的な活動の重視
○ 基礎的・基本的な知識や技能の習熟を図ることの重視
が述べられている。
身体を使って活動する時間をしっかり取って、子どもが数理の意味をとらえられるようにすること、知識を確かなものにしたり、技能を高めたりできるようにすることを重視していると考えられる。
また、基礎・基本は「生活や学習での様々な活動の基になるもの」としてとらえられている。
基礎・基本をいろいろな場面で活用していくことを重視していると考えられる。
これらのことが、基礎・基本を考察していく上で大事な視点となる。


教師はどのような働きかけをすればよいか

教師の働きかけは、子どもが学び続けていくために大切なものである。
子ども一人一人の算数的活動の質が高まってこそ、基礎・基本はより確かなものになると考える。
そこで、算数部では、「乗り越え」のある算数的活動を授業のなかに設定していきたい。
「乗り越え」のある算数的活動を以下のようにとらえた。

子どもが自己のなかで起こる「矛盾」「対立」などを感じ、ゆきづまったり、迷ったりしている状況を数学的な見方や考え方を生かしながら、克服していく活動

抵抗を感じながらも問題に立ち向かい、それを解決していくことができたとき、子どもは自信をもつと共に、考えることの楽しさを実感することができる。
また、ここでは「視点を変える」「今まで気づいていなかった意味や関係性などをとらえる」など、算数の学びが大きく伸展することも期待できるのである。
「乗り越え」のある算数的活動づくりのために行う、教師の働きかけの例を以下に述べる。

○事象と先行経験とのズレや自分がよいと思って行ってきたことが矛盾を含んでいることなどを取り上げる
(例)大きな箱と、小さな箱の重さを量ると同じ重さであったという事例を取り上げることによって、重さとは視覚だけではその大小を判断できない量であることに気づけるようにする。このように、重さの意味をとらえた上で重さを数値化する方法を工夫していけるようにする。

○子ども相互の意見や考えの違いを取り上げる
(例)「面積比べ」の際に、単位面積で数値化し比較している子どもと、まわりの長さで比較している子どもで比較結果が違ってしまった事例を取り上げ、どちらの方法が確かなものなのか、明らかにしていけるようにする。

○必要に応じて教師が子どもをゆさぶる
(例)一けたのたし算ができるようになった子どもに「3+3=33」ではなぜいけないのか、と教師が問いかけ、子どもが「もの」と「数」との違いを明らかにしていけるようにする。

「乗り越え」のある算数的活動づくりのために、上記3例以外にもいろいろな働きかけが考えられる。授業づくりの際に、教師の働きかけについてじっくり検討し、より価値の高い算数的活動づくりをめざしていきたい。


子どもはいかに学ぶか

子ども一人一人に個性があり、学び方にもその子なりの傾向が見られる。この傾向をその子の持ち味としてとらえ、生かし切ることができるようにしたい。そのためには、教師が子ども理解を深めていくことが大切になる。

子ども理解の手がかりとなるものの例を以下に書く。
・授業前のレディネステストやアンケート
・子どもが算数的活動をしている姿そのもの
・図や式など、子どもが算数的活動を通して残したもの
・子どもの自己評価にかかわるもの(自己評価カードやプリントなど)

子どもたちを1つの束としてとらえるだけでなく、個の集まりとしてとらえることが大切だと考える。「個に応じた指導」を推進するための手だてとして、少人数学習・TTなどがおこなわれているが、これらの授業について、子どもが自分なりの学び方を生かしているか、ということの吟味が必要であると考える。

自分の数学的なものの見方や考え方を生かして算数的活動に取り組み、問題解決にあたろうとする子どもは、独自性のあるユニークな学びができるはずである。このように、自分の持ち味を生かして基礎・基本を獲得していく子どもの姿を求めていきたい。

以上、授業改善について3つの視点を述べた。これらは共にかかわっており、3つの視点の絡みを考えながら、学習指導を工夫していきたい。